学会から帰るバスで、ちょっと気になった出来事があった。
最近の高速バスは、ハイテク。
コンセントもあれば無線インターネットもあるから、パソコンを開けて日本語のパワポをいじってた。
帰りのバスは込んでいた。
隣の席も占領して仕事がしたかったけれど、席がなくなると仕方がない。
隣に知らないおじちゃんが座った。
私のパワポを見て、「それ、中国語?」とおじちゃんが聞く。
「ううん、日本語。中国語と同じ文字も使うけどね」と私。
ちょっと恥ずかしそうなおじちゃん、続けて質問。
「前から気になってたんだけど、中国語とか日本語とかでタイプする時ってどうするの?」
「ん?」
今いち、質問の意図のつかめない私に、おじちゃん、例をあげて質問。
「例えば、dogって日本語でどうやってタイプするの?」
"dog"とアルファベットで打ちたい時はd-o-gとタイプするけど、
日本語にはdogに当たる日本語の語彙があって、「犬」だから、
それをタイプしたい時は、音を表すアルファベットでi-n-uとタイプして、
それから、「いぬ」か「イヌ」か「犬」か選ぶんだよ、と説明。
日本語にはdogに当たる日本語の語彙があるっていう当たりで、
おじちゃん、「馬鹿なこと聞いちゃった~」という顔した。
この人、英語以外の言葉、知らないんだろうな、って思った。
小学生の時の私を思い出す。
中学受験で算数・国語・理科・社会の試験勉強に集中してた私は、
小学生時代、英会話とか英語教室とか無縁だった。
アルファベットで知ってたのは、小学校で習ったローマ字ぐらい。
受験の終わった小学校6年の終わりごろだったと思う。
こども英会話に行ってた、友達の妹が、単語カードかなにか持ってて
英語が話題になって、私は、英語ってどうやって書くのか聞いた。
そのとき、私はミルクを、ローマ字のmirukuじゃなくてmilkと書く
別の言語があるってことを、初めて知った。
わくわくした。でも、
年下の、友達の妹が、当たり前のように教えてくれたのは焦った。
あれから何年だろう。
英語で授業を受け、友達とおしゃべりし、後輩にアドバイスし、
大学の窓口で交渉し、論文を書いている私がいる。
おじちゃん、まだ今からでも遅くないよ。
今度、こんな質問されたら、私の昔話もできるかな。
おじちゃんの好奇心が、世界を開く扉になるといいね、って。